夢を乗せた船

誰でも一度や二度は、何かしらの夢を持ったことがあると思う。例えば、アイドルになりたいだとか、宇宙飛行士になりたいだとか大きくて夢あふれた将来を頭の中に描いたことが誰しもあるはずだ。だけどその夢を本当に叶えられた人は、20人中1人いるかいないかぐらいだと思う。夢を叶えることは何よりも難しい。目が覚めると忘れてしまう夢のように、子供のころははっきりと浮かんでいた将来のビジョンが、年齢を重ねるごとにぼんやりと形が歪んできて、大人になるころには幼いころに何を夢見ていたか忘れてしまうことだってある。

そんな中、大きな夢をあきらめきれずそのまま大人になろうとしている者たちがいた。それが結成前の麦わらの一味のメンバー達だ。

 

ワンピースは、1997年7月22日に週刊少年ジャンプで連載が始まった少年漫画だ。作者は尾田栄一郎先生。今では国外にもファンがいる超人気漫画だ。ワンピースのストーリーを簡単に説明すると、麦わら帽子をかぶった少年、モンキー・D・ルフィがひとつなぎの大秘宝”ワンピース”を目指し旅をするというものだ。

 

ルフィはまず、仲間を集め始める。海賊狩りのゾロ、泥棒猫のナミ、噓つきのウソップ、黒足のサンジ、バケモノのチョッパー、幼いころから賞金が掛けられているロビン、とある島の裏を仕切っていたフランキー、骸骨のブルック。個性が大爆発していて、まるで共通点のなさそうな9人だが1つだけ胸に秘めた同じ思いがあった。それは夢を叶えたいという事。人に話せば笑われてしまうような大きな夢は、9人それぞれが持っている暗く悲しい過去を照らしてくれるたった一つの光だったはずだ。だけどその夢を捨てなければならないという瞬間がそれぞれに来た。涙がこぼれて止まらなくて下を向いて立ち止まった時にルフィはどこからともなくやってきて、一度捨てた夢を綺麗に拾い上げてポケットにしまった。この夢俺に預けてみろよと手を差し伸べ仲間に誘った。大きくて一人で持つには重すぎた夢は、ルフィの持つ大きな大きな夢を叶えるための1ピースになったのだ。

 

ワンピースの正体は、ゴール・D・ロジャーとその仲間たち、作者である尾田栄一郎先生しか知らない。そこがまたワンピースの良い所だ。私たち読者も、ルフィ達と同じ船に乗り旅をしているような感覚になる。私たちがあの日あきらめた夢も、ルフィの大きな夢を叶えるための1ピースになって夢の果てに連れて行ってくれるはずだ。